そんな土地柄にふさわしい温泉が、山陰屈指の名湯、玉造(たまつくり)温泉です。
玉造温泉は、宍道湖に向かって北に流れる玉湯川沿いに温泉街を形成しています。ここは古代最大の勾玉生産地であり、地名もそれに由来します。勾玉は玉造温泉のシンボルで、玉湯川には巨大な勾玉が取り付けられた、ちょっとアバンギャルドな勾玉橋も架かっています。
ここでは古くから宝石の一種である瑪瑙(めのう)を産出し(特に青瑪瑙は玉造でしか採れませんでした)、それ故に勾玉作りが盛んだったのですが、今も伝統工芸品として作られており、皇室に献上もされています。玉造温泉には瑪瑙細工店がいくつかあり、あちこちに勾玉がデザインされた図像やオブジェが見られます。
玉造温泉の歴史は非常に古く、神話の時代、
少名彦神(すくなひこなのかみ)が発見したという伝説があります。
文献上でも、奈良時代に作られた出雲国風土記に、川岸に温泉があって、人が集まり、市が立ち、
酒宴が開かれ、どんな病にも効き、「神の湯」と呼ばれる、と書かれています。
また、平安時代の枕草子にも、日本三名泉として登場します。国内でも最古級の温泉です。
近世には松江藩主の静養の地でもあり、明治以後も格式の高い温泉地として発展してきました。
それだけに、歓楽色は一切なく、高級旅館が建ち並んでいます。筆者は初めて玉造温泉を訪れたとき、その中でも比較的低料金だった「山水」という宿に泊まりました。
山水の湯船です。露天風呂もなく、これといった特徴はありませんでしたが、大浴場のような喧騒のない落ち着いた旅館らしいもので、ゆっくりと温泉に浸かる事が出来ました。湯はアルカリ性単純温泉で、少しヌルっとします。ここの湯は場合により加水・加温することもあるようですが、循環式ではなく掛け流しです。
山水には冬に泊まったのですが、冬の山陰の味覚と言えばやはり松葉ガニでしょう。山水では比較的低料金で松葉ガニが食べられました。
高級なイメージのある玉造温泉ですが、近年は日帰り入浴施設も出来ました。それがこの前衛的な建物の「玉造温泉ゆ~ゆ」です。内部は広く、レストランや大広間などもあります。勾玉型の湯船が内湯にも露天にもありました。筆者は二度目に玉造温泉を訪れた際、ここに入りました。
こちらは温泉街の少し上流にある、玉作湯(たまつくりゆ)神社です。古代建築の面影を残す、大社造の立派な本殿です。出雲地方の神社の本殿のほとんどは、出雲大社と同じ大社造です。なお、この神社も風土記に記載があります。
賽銭箱に刻まれた神紋にも勾玉があしらわれています。境内には古代玉作の跡も見つかっており、神社には古代から数多くの玉が神宝として伝えられています。祭神は玉作りの神・櫛明玉神(くしあかるたまのかみ)と、国造りと温泉の神である大名持神(おおなもちのかみ)・少毘古那神(すくなひこなのかみ)です。
玉湯川の谷を少し上がった場所にある「出雲玉作資料館」。ここには、玉造から出土した勾玉やその製造器具、原石などが展示してあります。それほど大きな資料館ではありませんが、なかなか他では見る事のできない展示品が多数あります。
資料館に展示されている、古代に使われた勾玉の砥石です。この他、製作途中のまま放棄された勾玉や、古代のガラス玉、ガラスを作るためのるつぼなどがありました。砥石は相当数出土しているらしく、実際に手で触ることも出来ます。
資料館の向かいには、古代の玉作遺跡を復元・保存した、「出雲玉作史跡公園」があります。かなり広い公園で、工房跡も多く、古代の玉作が相当な規模であった事が分かります。この公園の向こうには、「玉造温泉ゆ~ゆ」があります。
こちらは温泉街の北の国道沿いに建つ「いずもまがたまの里 伝承館」です。皇室や出雲大社へ献上する勾玉を作る、地元の老舗が経営している施設で、勾玉などの各種アクセサリーの販売はもちろん、製造工程の見学や、勾玉作り体験などが出来ます。
筆者もここで勾玉を作ってみました。係の人が指導してくれ、滑石(かっせき)という非常に軟らかい石を使うので、手先が器用でなくとも間単に作れます(笑)。製作時間は約1時間程。ちなみに古代の勾玉の中には、滑石製のものもあります。
外側の大きな勾玉が付いた首飾りが、筆者が製作したもの。内側の数多くの玉が連なった首飾りは、伝承館で購入したものです。
伝承館の2階は宍道湖を望むレストランになっており、名物の出雲そばなどが食べられます。なかなか充実した施設です。
伝承館には足湯もあります。足湯の底は、瑪瑙の原石で飾られていました。
出雲地方への旅行する人の多くは、神社や歴史に興味のある人でしょうが、
古代史や石が好きな人は、玉造温泉は必見のスポットです。
観光も温泉も土産も揃う優れた場所ですが、近隣に有名な観光地が多く、
あまり混雑しないのも魅力です。
玉造温泉
▼所在地:島根県松江市玉湯町玉造
▼泉質:アルカリ性単純温泉(山水、玉造温泉ゆ~ゆ)
▼ph:8.0(玉造温泉ゆ~ゆ)
▼泉温:52.2℃(山水)、30.4℃(玉造温泉ゆ~ゆ)
▼温泉の利用形態:掛け流し(加水・加温の場合あり、山水)
▼営業時間:10:00~22:00、朝風呂営業日あり(玉造温泉ゆ~ゆ)
▼休業日:月曜、祝日の場合は翌日(玉造温泉ゆ~ゆ)
▼入浴料:800円(山水日帰り)、600円(玉造温泉ゆ~ゆ)
▼問い合わせ先:山水 0852-62-1123
玉造温泉ゆ~ゆ 0852-62-1000 http://www.tama-yuuyu.com/
玉造温泉旅館協同組合 0852-62-0634 http://www2.crosstalk.or.jp/onsen/
玉造温泉の地図はこちら。
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1. 役立つブログまとめ(国内旅行)(投稿募集中)by Good↑or Bad↓ — 2009/12/08@07:30:21
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