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後生掛温泉 「馬で来て足駄で帰る」迫力の火山性泉

 
大湯沼
後生掛自然研究路の大湯沼

良質な温泉が集中している事で有名な、岩手・秋田県境に位置する活火山・八幡平。そんな中でも、大地の力を肌で強く感じられる温泉が、後生掛(ごしょうがけ)温泉です。
後生掛温泉の建物
後生掛温泉の建物

後生掛温泉は、標高1000m、八幡平秋田県側の中腹にあります。山の中の一軒宿ではありますが、湯治場の多い東北でも屈指のものであるため、大規模な施設です。それでいて、今も湯治場としてよく機能しているため、素朴な雰囲気が濃厚です。素泊まりで自炊可能な、格安の湯治棟もあります。

後生掛温泉の建物2
地獄地帯に隣接する後生掛温泉

温泉宿は、いわゆる「地獄地帯(火山ガス噴出による草木の生えていない場所)」のすぐ近くに建てられているため、新鮮で濃厚な火山性の湯を楽しめます。「オンドル部屋」という、地熱で床が暖まっている部屋もあります。

後生掛大浴場
バラエティに富んだお風呂のある大浴場

この写真は大浴場ですが、湯気が多くて上手く撮影できませんでしたので、宿泊時に頂いたしおりのものを使いました。大浴場には7種類のバリエーションに富んだお風呂があります。中でも特徴的なのが、写真左側の「箱蒸し風呂」。箱の中には温泉の蒸気が充満していますが、顔は箱の外に出しているので呼吸が苦しくなく、快適に蒸し風呂を楽しめます。

後生掛小浴場
灰色の濁り湯(小浴場)

大浴場には、地獄地帯の鉱泥に浸かれる「泥湯」もあります。温泉の豊かな日本でも、ごく限られた場所でしか浸かる事のできない貴重なものです。また、こちらは小浴場の写真ですが、通常の湯も灰色の濁り湯で、元々泥湯に近い性質を持った湯だという事が分かります。

後生掛食事
健康に配慮した宿の食事

こちらは旅館の食事。湯治色の強い宿のため、健康に配慮し、山菜がメインになっています。秋田名物のきりたんぽも出ました(写真右上)。

自然研究路
後生掛自然研究路(入口付近)

宿の裏の地獄地帯は、「後生掛自然研究路」として整備されています。後生掛温泉の源・八幡平の火山活動を間近で見る事の出来る、興味深いスポットです。国内でもこれだけ様々な形の火山活動を容易に観察できる場所は、そうはないでしょう。

オトメモナメ
オトメ・モナメ

自然研究路の入口付近の、熱湯・水蒸気の噴き出す「オトメ・モナメ」。この地方の方言で、「オトメ」は「本妻」、「モナメ」は「妾」を意味します。「後生掛」という地名の由来になった、次のような悲しい伝説が伝わっています。

三百年程前、九兵衛という若者が、ここで牛を飼って住み着きました。
が、三年後、重い病気に倒れてしまいます。
そこに恐山への巡礼に向かう娘が立ち寄って、手厚い看病をし、九兵衛は全快。
二人は結ばれて三年を幸せに過ごします。
しかし実は九兵衛には、岩手県の久慈に残した妻と子がおり、
妻が九兵衛を迎えにやって来ました。
そこで娘は、本妻と子の幸せを祈り、ここに身を投げました。
それを知って悲しんだ本妻も、「後生を掛けて(来世の幸福を願って)」身を投げました。
それ以降、ここを「オトメ・モナメ」と呼ぶようになり、
この土地を「後生掛」と呼ぶようになった、というものです。

この伝説は、もしかすると、この地にかつてあった水や大地の女神の信仰の名残かもしれません。
水の女神の信仰が、泉に身投げしたり、人柱となった女性の話に変わりつつ、
泉への信仰自体はそのまま残る、という例が世界的によく見られるからです。
大地や水、火などは、女神と見なされる事もよくあります。
そして、恐山という極めて土着的で、女性シャーマン色の強い宗教的要素が絡んでいる事や、
恐山と地理的に非常によく似た場所である事も、気になります。
寺院にならなかっただけで、ここにもイタコのような女性シャーマンでもいたのかもしれません。
「後生」という言葉には、宗教的な要素もあります。

もっとも、これらは大した根拠のない、個人的な推測に過ぎませんが。
ただ、「三」という数字が二回使われ、主人公の名前が「九」というのは、
何かしら意図的なものがあるように思います。
九兵衛の出身地「久慈」も、「く」の音が「九」に通じます。

脱線してしまいましたので、自然研究路に戻りましょう。

紺屋地獄
紺屋地獄 奥に旅館の建物が見える

「オトメ・モナメ」の奥にある、「紺屋地獄」。「湯沼」とも呼ばれます。噴気に含まれる硫黄と、それが地表に出るときに生成される硫化鉄等が沈殿して泥湯になっています。「紺屋」というのは染物屋の事で、染料を煮る様子に似ている事からこの名があります。ちなみに、奥の建物は後生掛温泉の旅館です。

大湯沼
随所に泥火山とマッドポットのある大湯沼

自然研究路の最奥にある「大湯沼」。記事冒頭の写真とは違う角度から撮影したものです。高温で強酸性の沼で、泥火山(噴き出した泥が山状に堆積したもの)やマッドポット(泥が噴き出して溜まっている、いわゆる坊主地獄)が多数あります。この沼は今も拡大しています。

マッドポット
マッドポット、いわゆる坊主地獄

研究路の傍らには、「中坊主地獄」や「小坊主地獄」、その他名もないマッドポットや噴気孔が無数に存在します。途中に透明な川も流れていますが、これは溶存物質が少ないだけで、水温86℃、ph1.8と、高温強酸性の川とのことです。かつては硫黄の採掘も行われていました。

大泥火山
日本一の大泥火山

「大泥火山」。元は湯沼だったところに、蒸気の含まれる物質が泥となって沈殿して浅くなり、またそれによって圧縮された蒸気が間欠的に泥を噴き飛ばして、それが再び山状に堆積したもの。大正六、七年頃から成長しはじめ、現在では約8mの高さになっています(地中部分が約7m)。泥火山としては日本一の規模とか。

自然研究路の様子を、動画に収めてみました。
オトメ・モナメ→中坊主地獄付近の熱湯噴出口→大泥火山の順です。
最後の大泥火山では、よく聴くと、噴き上がる泥とともに「ポコッ」という音が聞こえます。

黒たまご
黒たまごと「山のきぶどう」

研究路の途中には、「しゃぐなげ茶屋」という売店・休憩所もあります。ここでは表面が硫化した黒い温泉卵を食べられます。山ぶどう100%ジュースも売っていました。非常に酸味が強いです。なお、研究路は一周約2kmで、40分程度で散策できます。

こうして自然研究路を散策しててみると、後生掛温泉が、
いかに火山の恩恵を受けたものかという事が分かると思います。
強い酸性で、硫黄分の濃い湯は、古くから効能豊かな湯として知られ、
「馬で来て足駄で帰る後生掛(体調を崩して馬に乗ってやって来ても、
下駄を履いて徒歩で帰るようになる程、温泉の効果があるという意味)」
という言葉が伝わっている程です。

見返峠
八幡平見返峠より岩手山を望む

こちらは夏でも雪の残る、八幡平山頂付近の見返峠から、岩手山を望んだところ。観光道路「八幡平アスピーテライン」によって、後生掛温泉も八幡平山頂も容易にアクセスできます。路線バスも走行しています。なお、見返峠駐車場から山頂までは、徒歩約30分です。

後生掛温泉
▼所在地:秋田県鹿角市八幡平
▼泉質:酸性-単純硫黄泉(低張性酸性高温泉)
▼ph:3.2
▼泉温:88.4℃
▼湧出量:150リットル/分(自然湧出)
▼温泉の利用形態:掛け流し、加水(源泉温度が高いため)
▼日帰り営業時間:7:00~18:30
▼休業日:無休
▼入浴料:400円(別料金で個室・大部屋、昼食付日帰り入浴あり)
▼問い合わせ先:後生掛温泉 旅館部:0186-31-2221 湯治部:0186-31-2222
http://www.goshougake.com/Link


後生掛温泉の地図はこちら。
岩手県側からもアクセスできますが、
八幡平アスピーテラインは、冬期は県境の見返峠付近が通行止になります。
秋田県側は後生掛温泉まで冬期も通行可能ですが、豪雪地帯なので事前に確認を。

大きな地図で見るLink

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— posted by 温泉郷案内人 at 11:58 am   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

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