松之山温泉 「日本三大薬湯」ホウ酸含有量日本一

新潟県中南部、長野県と県境を接する十日町市。
県内でも有数の豪雪地帯である山がちなエリアですが、
ここに「日本三大薬湯」の一つ、松之山(まつのやま)温泉があります。

松之山の足湯
旅館「千歳」前の足湯

「日本三大薬湯」というくらいなので、泉質は特別なものがあります。その最も大きな特徴が、ホウ酸含有量。1リットルあたり349.5mgも含まれ、日本一の含有量です。色は、若干薄緑色の濁りがあるかどうかで、ほぼ無色透明なのですが、ほのかに石油臭がするという、非常に稀な特徴を持っています。写真のような足湯でも、その香りはよく分かります。
鷹の湯
日帰り入浴施設「鷹の湯」

そんな特徴ある湯を、手軽に楽しめるのが、松之山の温泉街の中心にある、市営の日帰り温泉入浴施設「松之山温泉センター 鷹の湯」です。「鷹の湯」は源泉名でもあり、南北朝時代、一羽の鷹が舞い降りて傷ついた羽を休めているところに、木こりが湯を発見したという伝説や、上杉謙信の隠し湯だったという伝説があります。それくらい古くから知られた湯でした。江戸時代の温泉番付にも、東の前頭として記載されています。

鷹の湯露天1
「鷹の湯」露天風呂からの眺め

「鷹の湯」には内湯と露天風呂があります。内湯は人が多かったので撮影していません。露天は、ご覧の通り、川を望む造りになっています。松之山温泉は山深い場所にあり、温泉街も谷川沿いに形成されています。

鷹の湯露天2
「鷹の湯」の露天風呂

露天の湯船。独特の石油臭が強く漂っています。石油臭というと、気持ちの悪いもののように聞こえるかもしれませんが、実際に入浴してみるとなかなか気持ちの良いものです(不思議な感覚ではありますが)。ホウ酸をはじめとした各種成分が濃いことも、入浴してみるとよく分かります。また、塩分もかなり濃いため、非常に塩辛い湯でもあります。

松之山温泉の特徴の一つが、この塩分の濃さであり、
戦後の一時期には、湯から塩を採取していたほどです。
山中の温泉としては、ここまで塩分が濃いのは比較的珍しい事で、
地下に閉じ込められた1200万年前の海水が、地圧によって湧出する、
「ジオプレッシャー型温泉」という説があります。
確かに、近隣に火山もないのに、塩分の濃い高温の湯が噴出している理由としては、
それなりに説得力があり、松之山温泉の各所に、この説が掲示されています。

ただし、こうしたいわゆる「化石海水」の多い、東京都内の温泉などとは、かなり異なります。
塩分濃度が高いのは同じですが、都内の化石海水系の温泉の多くは、半透明の茶色です。
また松之山温泉のような石油臭もなく、ホウ酸もこれほど含んでいません。
化石海水は、いかなるものでも海水の成分そのままということはなく、
長い年月の間に地底にて様々な化学変化を起こしており、それは平野部でも同じですが、
松之山温泉は、平野部でよく見かける化石海水の湯とは、かなり違っています。
平野部でよく見かける化石海水とは、また異なる化学変化を起こしているのでしょうか。
もっとも、平野部の化石海水にも、石油臭のするものもあるにはあります。

また、新潟県は古代から石油を産出することで有名な場所でもあります。
松之山温泉に含まれる事もある、近隣の兎口(うさぎぐち)温泉は、
松之山温泉と泉質も似ており、同じように石油臭がするそうです。
兎口温泉は、明治時代の石油試掘の際に、天然ガスとともに噴出したそうなので、
松之山温泉の石油臭も、石油と全く無縁ではないでしょう。
太古の海水中に含まれたプランクトンが石油化したのではないかという話もあります。
石油に近い成分を含むのであれば、よく見かける化石海水と成分が異なるのも当然でしょうか。
国内には、太古の植物が半ば石炭化したモール泉という種類の温泉もあり、
そうしたものに近いのかもしれません。
また、石油と似たような成分があるからといって、入浴できないという訳ではなく、
むしろ薬効成分豊かな貴重な湯と言うことができます。
石油自体、古くから薬として利用されてきたという歴史もありますので。
ちなみに松之山温泉の湯は、飲泉も可能です(施設によるようですが)。

松之山温泉街
松之山温泉の温泉街

さて、上で書いたように、松之山温泉には温泉街があります。小規模ではありますが、いくつかの旅館が建ち並び、土産物屋などもあります。湯上りにちょっと散策するのには、丁度良いでしょう。

しんこ餅
「まるたか」のしんこ餅

「まるたか」という土産物屋で買った、松之山温泉の名物「しんこ餅」です。うるち米で出来た餅の中にこしあんが入っています。餅はうるち米そのままの白いものが一般的で、餅を包む笹もビニール製のものが多いのですが、「まるたか」では写真のようなよもぎ入り本笹しんこ餅も売っています。コシヒカリ産地の餅は素晴らしい味わいです。

松之山の湯の花
湯の花を元にした入浴剤

こちらは「鷹の湯」で売られていた、松之山温泉の湯の花を元にした入浴剤です。粉は肌色のような色をしています。

松之山湯の花投入後
入浴剤投入後の浴槽

湯に入れると薄緑色になります。一応、松之山の湯を再現した色でしょうか。成分は松之山の湯と異なるため、石油臭や強烈な塩辛さはありませんが、確かに一般の入浴剤とは異なるようで、妙にヌルヌルとし、異様に温まりました。ちょっと不思議な入浴剤です。

また、松之山温泉は歴史ある湯である事は先に述べましたが、それに関連した事として、
小正月に行われる、婿投げ、墨塗りという非常に特殊な行事も伝わっています。
婿投げは、婿(前年に松之山出身の女性と結婚した男性)を温泉街の奥の薬師堂で胴上げし、
薬師堂から崖下約5mに向かって投げ落とすというもの。
非常に荒っぽい行事のように思えますが、松之山は豪雪地帯であるため、婿に怪我はありません。
婿投げの後、注連飾りや門松などを積み上げて燃やし、その灰と雪を混ぜて作った墨を、
参加者同士無病息災を祈願しながら顔に塗るのが、墨塗りです。
婿投げは300年程前、墨塗りは600年程前より伝わる伝統ある行事ですが、
松之山の中でも温泉街の中心である湯本にのみ伝わる行事で、
墨塗りの開始年代は伝説上の温泉の開湯年代にも近いので、
温泉そのものと何か関係があるのかもしれません。
崖から落とされて雪にまみれても、顔中墨だらけになっても、
その後で湯に浸かればどうという事もないのは確かな訳ですが。


特急はくたか
ほくほく線を走る特急はくたか(越後湯沢駅)

このような不思議な伝統と泉質を持ち、越後の山深くに湧く、松之山温泉。車で行ったほうが便利ではありますが、上越新幹線湯沢駅に直結する、北越急行ほくほく線まつだい駅より直行バスがありますので、東京から鉄道で行っても、さして不便ではありません。東京から鉄道とバスのみで日帰りも可能です。ただし、冬期は相当量の積雪となりますので、その点は注意が必要です(特に車の場合)。※特急はくたかはまつだい駅には停車しません。

松之山温泉(鷹の湯1号泉・鷹の湯2号泉)
▼所在地:新潟県十日町市松之山湯本
▼泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
(1号泉:高張性中性高温泉、2号泉:高張性弱アルカリ性高温泉)
▼メタホウ酸:242.0mg(1号泉)、349.5mg(2号泉)
▼ph:7.3(1号泉)、7.6(2号泉)
▼泉温::83.0℃(1号泉)、84.5℃(2号泉)
▼湧出量:60リットル/分(1号泉)、93リットル/分(2号泉)、ともに掘削自噴
▼温泉の利用形態:循環掛け流し併用、加水と思われる
▼営業時間:10:00~22:00(12月~3月は21:00まで)
▼休業日:5月~12月の第2・4木曜日、1月~4月の毎週木曜日 ※祝日の場合は翌日休業
▼入浴料:500円
▼問い合わせ先:松之山温泉センター「鷹の湯」 025-596-2221
http://www.matsunoyama.net/Link (松之山温泉総合サイト)


松之山温泉の地図はこちら。

大きな地図で見るLink

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— posted by 温泉郷案内人 at 02:05 pm   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

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