雲之上温泉 関西最高所の温泉から雲海を望む

三重県、奈良県、和歌山県に跨り、西日本最大の秘境とも言うべき紀伊山地。
その中でも秘境中の秘境、奈良県南西部の野迫川村(のせがわむら)に、
知る人ぞ知る秘湯があります。

雲の上温泉の雲海
雲之上温泉から眺めた雲海

その名も雲之上温泉。名前の通り、見事な雲海を望む事が出来、まさに「雲の上」にある温泉です。標高は1200m。高野山、金剛山を眼下に見下ろし、はるか彼方に奈良盆地、大阪平野をも望見できます。
野迫川村は奈良県南部ながら、山に囲まれ、標高も高いため、冬は寒く、夏は涼しいです。
「奈良県の北海道」という異名もある程。
特に雲之上温泉は野迫川村の中でも標高が高く、気温はさらに下がります。
筆者はお盆の時期に泊まったのですが、平野部で30℃を越える猛暑だったにも関わらず、
ここでは20℃前後で、寒いくらいでした。
冬には-15℃まで冷え込み、積雪も2、3mになるそうです。

ホテル開雲荘
雲の上温泉 ホテル開雲荘

雲之上温泉は一軒宿の温泉で、「ホテル開雲荘」が建っています(ホテルといっても鉄筋コンクリートというだけで、部屋もほとんどが和室であり、完全に旅館の雰囲気ですが)。ここが湯元で、周囲には山以外に何もありません。ちなみに関西では最高所の温泉です。

開雲荘の湯船
ホテル開雲荘の湯船

開雲荘の湯船。湯はアルカリ性単純泉でこれといった特徴はないのですが、大きな窓があり、景色は存分に楽しめます。折角の絶景ながら露天はありませんが、真冬の気候を考えれば入浴不能になるでしょうし、管理も難しいと思われるので、仕方ないでしょう。

開雲荘の夕食
ホテル開雲荘の夕食

開雲荘の夕食。あまごや山菜など、山の幸が満載です。家庭料理の趣ですが、なかなか凝った料理も出ます。

夜明けの雲海
夜明けの雲海

最初の写真よりも早い、5:30頃に撮影した雲海(最初の写真は6:15頃、どちらも客室から)。雲海を見るなら早起きして窓の外を確認しましょう。ちなみに筆者は3泊しましたが、最終日に偶然拝む事が出来ました。自然現象なので行けば必ず見られるというものではありませんが、一日の寒暖の差が激しくなる晩秋が一番発生しやすいようです。

金剛山の望遠
金剛山の望遠

雲海の望遠写真。中央の立派な山は、奈良県と大阪府の間にそびえる金剛山(1125m)。左(東)の山裾には和歌山県境もあります。

高野山方面の望遠
高野山方面の望遠

こちらは別の場所の望遠。手前の雲海の下あたりに、高野山があります。高野山の標高は820mくらいあるのですが、すっかり雲海に覆われています。

温泉から雲海を望む
温泉から雲海を望む

雲海発生時の、開雲荘の浴場。写真では分かりにくいかもしれませんが、しっかり雲海が見えます。雲海を見ながらの温泉入浴は、なかなか贅沢なものです。

雲海がないときの眺め
雲海がないときの開雲荘からの眺め

こちらは雲海がないときの客室からの眺め。どこまでも続く山並みに、深く切れ込んだ谷、そしてはるか遠くに見える平野や盆地……雲海がなくとも、十分に絶景です。

大阪平野の夜景
大阪平野の夜景

夜になると、街に明かりが灯り、夜景となるので、奈良盆地や大阪平野の場所がよく分かります。

立里荒神社の参道
立里荒神社の参道

先に山以外に何もないと書きましたが、実は、開雲荘から徒歩10分程のところに、立里荒神社(たてりこうじんしゃ)という神社があります。このような千本鳥居の参道を歩いて参拝しますが、斜面はかなり急です。

立里荒神社社殿
立里荒神社社殿

立里荒神社の社殿。弘法大師空海が高野山を開くに当たって、その守護と発展を祈願し、三宝荒神(火、かまどの神)を祀ったのが由来です。以来、神仏習合の宮として栄えましたが、明治の神仏分離により神社となりました。戦前までは女人禁制だったそうです。今も高野山の一部を成す重要な聖地であり、非常に交通の便が悪いにも関わらず、多くの参拝者が訪れます。最近では珍しくなった参籠所(さんろうじょ、参拝者専用の宿泊施設)もあります。

お辰の墓
三輪山型説話の残る、お辰の墓

開雲荘の近くには、他に「お辰の墓」と呼ばれる祠があり、こんな伝説があります。このあたりに住んでいた、お辰という娘のところに、高野山の若い僧が毎晩通ってきました。不思議に思ったので、僧の衣に糸を通した針を刺して、糸をたどると、何とその正体は大蛇でした。その後お辰は蛇の子を産んですぐ死にましたが、遺言により見晴らしの良い場所に葬られた、というもの。神話に見られる「三輪山型説話」であり、ルーツは大変古いものと思われ、興味深いです。

さて、近隣にある二つの場所を紹介しましたが、自然と一体化している神社と祠なので、
実際にはやはり山しかないと言ってもいいでしょう。
雲之上温泉は、関西では有名な山岳温泉なのだそうですが、
それも温泉通、写真家、登山家や、立里荒神社の参拝者に限った話で、
実際にはほとんど知られていないと言っても良いと思います。
筆者はここに泊まったとき、お盆が近くなって突然休みが出来たので、関西に旅行しようと思い、
急遽宿を探したところ、時期が時期だけに全く空きがなかったのですが、
ここにはすんなり予約を入れられました。実際、宿泊客もあまりいませんでした。
おそらく関西の穴場中の穴場なのだと思います。
紅葉・雲海の時期と、立里荒神社の例祭日などを除けば、空いている事でしょう。

しかし、これほどの絶景が見られ、夏でも非常に涼しいので、避暑地としては最適です。
世界遺産となった高野山観光にも適しています。
雲海はいつでも見られる訳ではありませんが、それでなくとも絶景は楽しめますので、
喧騒を離れたい人にはお勧めの場所です。
今や秘湯、秘境と言われる場所にも数多くの人が集まるのもよくあることですが、
ここなら本質的な意味での秘湯、秘境の雰囲気を味わえると思います。

雲之上温泉
▼所在地:奈良県吉野郡野迫川村立里179-2
▼泉質:アルカリ性単純温泉)
▼泉温:27.5℃
▼温泉の利用形態:常時加温、加水の場合あり、一部掛け流しまたは掛け流し・循環式併用
▼日帰り営業時間:8:00~20:00
▼休業日:1月16日から3月31日までの1日を除く木曜日
▼入浴料:600円
▼問い合わせ先:ホテル開雲荘 07473-7-2721 http://kaiunsou.hp.infoseek.co.jp/Link


雲之上温泉の地図はこちら。
バスの本数は少なく、車で行くのもなかなか大変な場所ですが、
高野龍神スカイライン経由が最も容易なルートだと思います。
なお、高野山ケーブル高野山駅まで、開雲荘から送迎があります(要予約)。

大きな地図で見るLink

宿 一軒宿 単純泉 秘湯 絶景

— posted by 温泉郷案内人 at 08:32 am   commentComment [5]  pingTrackBack [1]

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 朝の冷え込み
 今朝は放射冷却とかで空気が冷え込んでいました。高野山がとうとう氷点下だったとラジオが知らせていました。
みまもり隊として辻に立っていますと、子供たちの服装にも変化が現れています。相変わらずTシャツ1枚の子がいますが、大抵は長ズボンとジャンパやセーターになっています。私も着込んで行ってきました。真冬ですと、まず手がかじかんできますが、まだ今のところ手袋は必要がありません。お昼の気温は16度前後だそうです。 more »
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